フルカ山岳蒸気鉄道のSLを撮影しに行く(注:乗車はしていません)

SLの写真を撮りたい。ふと、そう思い立ち、フルカ山岳登山鉄道のことを調べました。フルカ山岳蒸気鉄道とは、スイスアルプスにあるフルカ峠を登って超えていく鉄道で、その代替ルートとしてトンネルが完成したときに一旦は廃線となった路線です。その後、有志の方々の手によって、その廃線となっていた路線にSLを走らせることで、観光山岳路線として現在は復活している、ということのようです。一般列車(グレッシャーエクスプレスも含みます)はそのトンネル(=フルカトンネル)を通りますので、あっという間に過ぎてしまうところを、フルカトンネルに入らずに峠に登っていき、峠を越えて、また元のルートに戻ってくる、といういわばトンネル迂回ルートのような形の山岳路線です。ですので、あくまでも目的地に到達するための手段としての鉄道ではなく、観光路線という意味合いが非常に強いものとなっています。

本当はちょっと乗ってみたい気持ちもあったのですが、一般庶民の私には、あまりに高額だったため(この点は後述します)、諦めて、SLの写真だけ撮りに行くことにしました。

結果を言ってしまいますと、かなりハードな行程でした。しんどかったです。正直、あまり人にはお勧めできません。こうやって旅していると、いつもいつもうまくいくわけではありません。でも、こういった失敗例でも、逆に「やってみたいと考えている方へ。それはやらないほうがいいです」というメッセージにもなりますし、こういうアプローチでの「旅の道しるべ」があってもいいのかなという思いで書いていきます。道しるべ的に例えて言うと、こっちへ行ってください、ではなく、この先行き止まりなので行かないでください、という感じです。したがって、

この記事の対象者は

私と同じように、なるべくお金をかけずにSLの写真を撮りたいと考えている方で、

・Furka DFB駅への徒歩でのアプローチ方法を知りたい方(あまりお勧めは致しませんが)

・で、結局どうすれば、お金をあまりかけずに楽に撮れるの?

ということになろうかと思います。

まず、フルカ山岳蒸気鉄道のSLチケットは、下記公式ページから購入できるようです。

https://www.dfb.ch/en/

このなかで、Welcome to the 2022 season の下のHere to our offersボタンで入っていきます。SLと、ディーゼル列車の2択となりますので、SLは左側の「Book our steam trains here」のほうから購入することができます。

SLは、(曜日によりますが、だいたいの目安として)Realp→Oberwaldが1日2本、Oberwald→Realpが1日2本となっております。他、ディーゼル列車も、限りなく少ないですが、一応走っています。

同じサイト内に、運行スケジュールも掲載されています。ご覧のとおり、今年(2022年)は9月25日が最終日です。そうなんです、この路線は厳しい山岳地帯を走りますので、夏の間だけの運行となっております。

https://assets.ctfassets.net/s54wddymsrke/1nO87eUcbQ7r1aHC0jd2Ve/996a548b9003e5ebfb1614dbe178fd53/DFB_Fahrplan_2022_Farbe_druck.pdf

この運行スケジュールは、撮影者にとっては、重要な情報です。例えば、下のタイムテーブルに、機関車の、もくもくした絵がありますが、これがSLです。そして、10とか11とか数字が書かれていますが、これは右側に注釈があり、要するに、10(Realp14:20発のSL)は、木曜、金曜、土曜の運行。11(Oberwald10:50発)は、金曜、土曜、日曜の運行となっています。乗車される方は、上記サイトでチケットを買うときに、日付から選んでいけば、その日に運行している列車しか表示されないので、そこまで意識することはないですが、私のように、乗車せずに、カメラを持って待ち構えている人(と言っても、私は撮り鉄ではありませんが)にとっては、非常に重要な情報です。

この運行スケジュール表の下のほうのFahrpreiseを見てください。これが運賃です。Realp→Oberwaldのセカンドクラス(2等車)で、片道75スイスフランです。ここでは、スイスHalf Fare cardの半額適用はありません。そのまんま、かかります。高すぎです。私のような一般庶民にはなかなか手が出せません。もちろん、有志の方で運営されているという背景は知っています、維持費はかかるので協力するべき、というご意見もあることもわかっております。気持ちだけは、協力させて頂いて、先立つものは、お金に余裕のある方々にお任せすることにしたいと思います。

ちなみに、同区間を走るディーゼル列車は、片道40フラン(2等車)です。これでもやっぱり高いです。無理です。

それでも、SLの写真は撮りたい。そう思った私は、この途中にあるFurka DFB駅に注目しました。このFurka DFB駅に、11時頃辿りければ、RealpからのSLが11時05分到着し、11時30分に出発する。その後、少し待てば、OberwaldからのSLが11時55分に到着する、という効率的な撮影ができるという目論見です。撮影時には背景も重要ポイントとなりますので、できるだけアルプスの山中を背景とできそうなこの駅を目指すことにしました。あ、この日は日曜日でしたので、11と書かれたSLも運行しているということです。

まあ、はっきり言ってしまいますと、この考えが浅はかでした。。

まず、地図でFurka DFB駅の位置を確認します。下地図のとおり、まさに山の中にある秘境駅です。この地図で見ますと、近くには道路があるように見えますが、実際にはかなり離れています。この道路は、峠を越える道ですので、山の上のほうを通っていて、Furka DFB駅は谷底にあたります。

私は車で行きましたので、問題は、①こんな山道(車道)で駐車場はあるのか、と、②谷底に下りていく道(徒歩用)はあるのか、といったところでしょうか。もうちょっと拡大しますと、このようになっています。Google Mapには、下りていく道は出てきません。

これだと、なかなかイメージつきにくいですよね。今はGoogle Earthというアプリで無料でおおよその地形を把握することができる便利な時代です。それによると、下のような位置関係です。一応、危険な崖ではないことくらいは、事前調査してから出かけます。

あ、私は車で行きました、と言いましたが、この車道につきましては、バスも走っています。バスで、この地図でいうところの、Furkapassや、Furkablickと書かれているところにバス停があります。アンデルマットから681系統バスが出ております。

https://www.postauto.ch/en/excursion-tips/furka-pass-route

ただし、本数は少ないです。一応貼っておきますが、上記サイトのなかにあります。このエリアを攻略するには、先ほどのフルカ山岳鉄道の時刻表と、このポストバスの時刻表を両睨みして、計画を立てることが必要となってきます。(私は、結局いいプランが組み立てられずに結局、車にしてしまった、ということです。)

ここからは、車で行った私の体験談が中心となりますが、ということで、バスでも到達は可能です。

車で行っても電車で行っても、まずはアンデルマットを目指すことになります。電車の方は、アンデルマットから681系統バスで、フルカ峠を目指します。車にしろバスにしろ、結局同じ道を走ります。私は最後、その道からは谷底に歩いて下る予定のため、正直そんなに標高あがってくれるなよ、なんて思ったりしながら運転していましたが、そんな思いとは裏腹にぐんぐん標高を上げていきます。途中くねくね道を走りますが、すれ違いが厳しいようなところはほとんどなかったです。少なくとも上りの道はどのみちそんなにスピード出ませんので、特に問題はありません。下りは少し注意してください。思いのほかスピードが出てしまいますので、カーブにはガードレールがない箇所もあったりして、少し怖いです。

さて、駐車場を探しながら、車を走らせていきます。実は、目的地であるFurka DFB駅以外にも、少し気になっている場所がありました。事前に調べていたところ、もし、途中のHotel Tiefenbachのあたりで、車を停めることができたなら、そこから歩いて下ってもいいかなと少し考えていました。その理由は、ここから下っていくと、Steinstafelviaduktという石造りのアーチ橋があるようで、そこを通るSLの写真もいいかなと思っていたので。

ということで、上地図の右のほう(右のほうがアンデルマットやRealp方面です)から来て、最初の候補ポイント(①)のホテル・ティーフェンバッハに着きました。

確かにここには、道沿いに駐車場はありましたが、よく見てみると、下写真のような看板が立っています。これは、ホテル客専用(nur は英語のonly、fürは英語のforですので、つまりはonly for guestsということです)と書いてあります。それ以外で、誰でも停めてよさそうな場所はありません。よって、ここは、私のように、車を置いて近くをハイキングする人が停めるべき場所ではないようです。諦めることにしました。

ここを過ぎると、ところどころに、数台だけ停められるようなスペースもたまにありますが、どこも、要するに路肩駐車となってしまいます。そんな、もし停めることができたらラッキー、みたいなことは、あまりに運任せ過ぎますし、それを皆さまにご紹介するような無責任なことは私にはできません。よって、それら路肩駐車スペースもパスします。

その後、上地図の②、Furkablickというレストランがあるところまで、まともな駐車場はないと思ってください。この②のポイントには駐車場はあるにはあるのですが、ここはかなりの激戦区です。私が行ったときは、ほぼ埋まってしまっていました。もし、停められることができたなら、停めてしまっていいと思います。なぜなら、後でお話しますが、Furka DFB駅へ下っていく道は、ここから始まっていますので。ただ、私は停められなかったので、今回は、ここもパスします。(後でFurkapassからここに歩いてくることになります)

結局③のFurkapassまで、車で来ました。ここには、大きな駐車場があります。ここに至るまで駐車スペースを見つけられなかった私のような平均的な運の持ち主の方は、ここに停めればいいと思います。

さて、せっかく車を停めたので、恒例の駐車場チェックを超簡単にしておきます。

①アプローチの容易性 ★☆☆

さすがに、山道を長いこと走りましたので・・。

②移動の容易性 ★☆☆

目指すFurka DFB駅は、はるか下のほうにあります。

③安全性 ★★☆

基本的には観光客しかいないので、何かいたずらされることはなさそうですが、とはいえ山の中(上?)なので。

④支払い・料金 ★★★

料金は無料です。

⑤空き具合 ★★☆

広いので問題ないとは思いますが、おそらく登山客が車を置いていくというパターンが多そうですので、回転率は悪そうです。

ここは標高2,436m。残念ながら、だいぶ高いところまで来てしまいました。目指すFurka DFB駅は2,163mなので、270mほど下らないといけません。まずは、下りていく道を探して歩き回りますが、どうやらこのFurkapassには、そんな道はないようです。逆に近くの山に登る登山道は何本かあるようで、多くの人はここをベースに登っていきます。下りていく道を探している人は、私以外は誰もいません。結局、Furkapassからは下れないようですので、手前のFurkablickというレストランのあたりまで歩いて戻ることにしました。こんな感じの車道を歩きます。平坦な道で10分かからないくらいでしょうか、そこまで大変ではありません。が、下写真でいうところの右のほうは歩かないでください。右のほうは、かなりの急斜面で谷底です(その谷底のほうに下りていきたい、ということです)。車が来ると危険です。必ず山側を歩いてください。

ここがFurkablickというレストランです。さっき車で通ったところですが、改めて見てみてもここの駐車場は満車です。この(Furkapassから来ると)手前に、下山道の入り口を発見しました。黄色い看板には、Furka DFBと書かれていますので、ここを入っていきます。

こんな感じで、テラス席の下から下っていきます。テラスでお茶している人たちからは、あの人どこ行くんだろう、といった視線を感じます。この道を下っていく人は、私以外は誰一人としていません。この先の道中、結局誰にも会いませんでした。かなりのマイナーなルートです。

さすがに私も、途中、「本当に戻れるなあ」とちょっと不安になります。振り返ると、このようにスタート地点のレストランが、かなりの急斜面の上に立っていることがおわかり頂けると思います。ここを一気に下っていくということです(逆に帰りはここを登っていくということです)。

私の脚で、30分~40分でしょうか。Furka DFB駅に到着しました。ちなみに私はそこまで健脚ではありません、ごく平均的な人間です。すると、もくもく煙を上げながらSLがやってくるのが見えました。これが、Realpからやってくる今日の1本目のSLです。

Furka DFB駅に到着したSLです。この駅には、25分停車して、乗客は降りて、駅のイートコーナーで軽食をとったり、写真撮影をしたりすることができます。そうなんです、ぶっちゃけお金を払ってSLに乗ってしまえば、結局写真は撮れるんです。

この写真(下)だって、駅停車中ですから、乗客は降りて撮影可能です。ですので、この写真自体には、そこまで価値はありません。端的に言うと、お金払えば誰でも撮れるアングルです。

これも駅停車中のSLです。なかなか立派なSLです。以前、当ブログでもご紹介したブリエンツロートホルン鉄道よりは、本格的なSLのようです(あのときはミニSLといった感じでした)。スイスで本格的なSLを撮影したい方は、こちらのほうだと思います。

今、この駅にいる人は、乗客と売店の店員さんたちだけで、それ以外歩いてここまで来た人は私一人だけです。

出発時刻となり、セレブな方々は全員列車に乗り込み、行ってしまいました。SLはフルカトンネルに入っていきます。そんなSLを、駅に残された売店の人たちは手を振って見送っています。鉄道好きの南田裕介マネージャーだったら、泣いてしまうやつです(さすがにこれは知っている方は少ないですかね。)。

ということは、最初のSLが行ってしまったら、駅には(店員以外は)私だけになってしまいました。次のSLが来るまで、しばらく駅をぶらぶらします。

これがFurka DFB駅です。このテントのなかにちょっとした売店があり、軽食を食べたりコーヒーを飲んだりすることができます。

私も、ソーセージを食べながら、次のSLを待ちます。最初のSLが行ってしまった後、当然お客さんはいなくなりますので、グリルの火を切ってしまったようで、私が注文したたら、また火をつけていました。なんかもう、ほんとに申し訳ないです。

テントのなかの売店では、このようにグッズの販売もしています。

乗車はしていませんが、マグネットだけ買ってみました。この鉄道の維持はかなりのお金がかかると思われ、せめてもの(協力されて頂こうという)気持ちです。

次の、Oberwaldから来たSLが、フルカトンネルを抜けて、やってきました。このアングルは、SLに乗っていない人にしか撮れないアングルです。逆にいうと、この写真くらいしか、差別化できていません。

この写真も駅停車中のものです。先ほどのSLとは、少しタイプが違うようです。

これまた、なかなか本格的なSLです。格好いいですよね。もちろん、この写真もSLに乗車すれば、停車時間中に撮れる写真です。

この列車も出発時刻がきて、Realpに向けて行ってしまいました。一人残された私は、ここで現実に戻されます。そうです、この後、来た道を約270m登らなくてはなりません。270mというのは、サンシャイン60が約240mですので、それより高いことになります。あべのハルカスは300mなんですね、さすがにそこまでは高くないですが、それでもかなりきつかったです。

とにかく、この帰りの登り道はかなりしんどかったので、これが、人にこの経験をお勧めできない理由です。Furka DFB駅でSLを撮影したい方は、お金を払ってSLに乗ってください。停車時間は充分ありますので、いい写真が撮れると思います。

そして、よく考えてみれば、乗車せずにSLを撮影することができる方法、ありました。出発駅のRealp駅かOberwald駅で出発前のSLを撮ればいいんです。途中のGletsch駅も、車orバスでアプローチできる駅なので、そこでもいいと思います。

なんでそんな当たり前のことをせずに、なぜ、わざわざこんなきつい登りを歩いているんだろう。そんなことを振り返りながら、ひたすら270mを登り切りました。

こんな物好きなことをしようと思う方は、そんなに多くはないとは思いますが、もし、Furka DFB駅まで歩いて行ってSLを撮ろうという方がいらっしゃいましたら、その前にこのブログのことを思い出して頂き、くれぐれも慎重に検討して頂ければ幸いです。

では、また。

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